顎変形症の治療(外科矯正)
下顎が大きかったり(下顎前突症)、あるいは横に曲がっていたり(下顎側方偏位)と、骨格の不調和が著しい場合には、矯正単独治療では不正咬合の改善が難しく、設定した治療目標を達成できないことがあります。そのような場合、矯正治療と外科手術(美容整形とは違います)を併用して治療にあたります。
外科手術自体は全身麻酔下で2~3時間で終了します。手術後は痛み、腫れを伴うため、1~2週間程入院をして痛み、腫れ、食事の管理をします。尚、当院では顎口腔機能診断施設基準を満たしており、顎変形症と診断し外科手術矯正を行う場合には、矯正治療と外科手術に保険が適用されます。
1、検査
矯正単独治療の場合と同じ検査をし、さらに顔面の筋活動を調べます。
2、手術に対するカウンセリング
実際に執刀する口腔外科医と手術についてのカウンセリングをします。
3、CT撮影と手術前矯正
骨格改善を重要視した治療目標を設定するためCTを利用します。ManMoS(複合現実感シミュレーションシステム)を用いて、歯を動かす前の状態で骨格改善をシミュレーションします。それにより手術前矯正での歯の移動方向を決定します。手術前矯正の期間は1年~1年半程です。
4、CT撮影と外科手術
外科手術の1~2週間前に自己血の採血、麻酔検査を行ないます。外科手術直前の状態で再度CT撮影を行い、ManMoS(複合現実感シミュレーションシステム)を用いて最終的な骨格改善のシミュレーションを行います。外科手術法を決定し、外科手術時にシミュレーションした下顎骨の位置関係を再現するための、顎間固定用スプリントを作製します。実際の手術ではこの顎間固定用スプリントをもとに、口腔外科医が骨格の位置関係を改善します。
5、手術後矯正
外科手術を行い骨格改善が行われた後に、手術後矯正治療を6ヶ月~1年程行ない最終的な噛み合わせの治療をしていきます。
主訴 | 噛み合わせを良くしたい |
診断名 | 骨格性下顎前突 |
初診時年齢 | 34歳10ヶ月 |
症状 | 前歯部反対咬合 |
主な矯正装置 | マルチブラケット矯正装置 |
抜歯 | 非抜歯 |
治療期間 | 1年8ヶ月 (初診検査から矯正治療終了時検査までの期間) |
費用 | 保険適応 |
治療上のリスク | カリエス、歯肉退縮、顎関節症、歯根吸収、失活歯、クラック、歯根の露出、歯周病治療があります。治療効果には個人差があり、あくまでご参考とお考え下さい。 |
CT-ManMos(複合現実感シミュレーションシステム)
骨格の不調和が著しくても、上下の歯は噛み合う必要があり、歯は適応するために従来よりも位置、傾きを大きく変えます。外科手術を伴う矯正治療の目標は、骨格の不調和の改善をし、その上で歯を対称に並べることです。従来の診査では上下顎歯列模型での噛み合わせを重要視してきたので、外科手術後の顔貌改善が不十分な場合がありました。当院では、CTを利用してManMoS(複合現実感シミュレーションシステム)を用いて、先ずは外科手術後の顔貌予測を行い、その上で歯の位置を決定し、骨格改善を重視して下顎骨の位置決めを行っています。