歯科矯正用
アンカースクリューと
アンカープレート ANCHOR SCREW AND PLATE
歯科矯正用アンカースクリューとは、チタン製の小さなネジのことです。このネジを歯槽骨に埋め込んで、歯を引っ張る固定源にします。アンカープレートはT型やY型と様々な形状が存在する装置であり、アンカースクリューと同様にミニスクリューを用いて骨に固定することで、歯を動かす固定源にします。下記にて、歯科矯正用アンカースクリューとアンカープレートの具体的な使用目的をご紹介いたします。
- 便宜抜歯により矯正治療をする患者さんであり、抜歯スペースを
閉鎖する際に奥歯を動かさずに、前歯だけを動かしたい場合 - 片側だけの歯を動かしたい場合
- 開咬症例に対して奥歯を圧下(潜らせる)したい場合
- 上下奥歯を後ろに動かし、顔貌との調和を考えて便宜抜歯をせずに
治療したい場合 - 上あごの裏側(口蓋)や上下の表側(頬側)に、少し大きめのネジ
(アンカープレート)を入れて歯を大きく後ろに動かしたい場合
当院では、20年前という日本で五指に入るくらいに早いタイミングから、歯科矯正用アンカースクリューとアンカープレートを使用して、幅広い症例に対応してまいりました。例えば、骨が固まってきた高校生以降に上顎を横に広げたい場合、今までは外科的な手術を併用するのが一般的でした。しかし、歯科矯正アンカースクリューやアンカープレートを埋入することにより、大人になってからでも手術をせずに上顎を広げられる割合が増えてきています。
現在では装置も色々な形がありますが、この治療を行う際、院長がオリジナルで装置を考案しています。既存の装置を使うのではなく、患者さん一人ひとりに合わせて作製することで、より幅広い症例へ柔軟に対応していくのが、私たちのスタイルです。
歯科矯正用アンカースクリューを用いた矯正(歯科)治療
矯正治療では、歯を移動させる際に必ず固定源が必要になり、この固定源をいかに確保できるかが矯正治療の成否に関わっています。 もともと矯正治療における歯牙移動は、歯と歯での押し合いと、引っ張り合いが基本です。
歯科矯正用アンカースクリューを用いた矯正(歯科)治療が行われていなかった頃、永久歯抜歯矯正治療を行う際、抜歯スペースを閉じるには、奥歯3本の大きい固定源に対して犬歯1本を動かしたり、またヘッドギアを使用して奥歯の固定源を強化してきました。
このことは、ある歯牙移動を行なえば、隣接する歯牙に対し必ず反作用が発生し、動いてほしくない歯牙も動いてしまうことを意味しています。結果、予定していた歯牙移動を達成できない場合が多いです。
さらに、上下顎左右側の奥歯を同時に同方向へ移動すること、上下顎奥歯の圧下移動(歯牙を潜らせること)をすることは、非常に困難であり、それを完全に達成することは無理と考えられます。そこで絶対的な固定源を確立する為に歯科矯正用アンカースクリューを用いた矯正(歯科)治療が行われるようになりました。
インプラントとは、「しっかり埋め込む、差し込む」という意味があります。一般的にインプラントといえば、人工の歯を埋め込むことを考えますが、当院で行なっております歯科矯正用アンカースクリューを用いた矯正(歯科)治療は、お口の中にチタン合金でできたスクリューを埋め込み歯牙移動の際に固定源として利用する治療法です。
顎骨にしっかりと固定された歯科矯正用アンカースクリューから直接歯を動かすことで今まで固定源として使用してきた隣接歯にかかる反作用が起こらなくなり、比較的スムーズに矯正治療が行えるようになります。そして3D_Setup_Managerにより明確にした治療目標を達成することがほぼ可能となります。
歯科矯正用アンカースクリューによる治療上のメリット
混合歯列期(小学生から)
歯科矯正用アンカースクリューによる治療上のメリット ANCHOR SCREW
絶対的固定源の確立
口元の突出や極度のデコボコの患者さんを治療する場合に小臼歯抜歯矯正治療を行います。その際、固定源の確立がないと奥歯が前方へ移動してしまい抜歯により得られたスペースが無くなり、口元を十分に下げることができなかったり、デコボコを解消できない場合があります。そのようなことを起こさない為に、歯科矯正用アンカースクリューから歯を直接動かすようにします。
- 青丸:歯科矯正用アンカースクリュー(デュアル・トップオートスクリュー)
上顎 前歯の後方移動、奥歯は移動させない 下顎 前歯の僅かな後方移動、奥歯の前方移動 赤 矯正治療前 青 治療目標
(矯正治療後)赤 矯正治療前 青 治療目標(矯正治療後) 歯科矯正用アンカースクリューに治療目標を達成することができた。
上顎では前歯の後方移動、奥歯は移動させないこと、下顎では前歯の僅かな後方移動と奥歯の前方移動で上顎前突が改善された。
主訴 | 前歯の歯並びを治したい |
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診断名 | 前歯部叢生を伴う上顎前突 |
初診時年齢 | 12歳8ヶ月 |
症状 | 上顎犬歯の唇側転位 |
主な矯正装置 | マルチブラケット矯正装置、 歯科矯正用アンカースクリュー |
抜歯 | 上顎両側第一小臼歯、下顎両側第二小臼歯 |
治療期間 | 2年6ヶ月(初診検査から矯正治療終了時検査までの期間) |
費用 | 96万円(税抜) |
治療上のリスク | カリエス、歯肉退縮、顎関節症、歯根吸収、失活歯、クラック、歯根の露出、歯周病治療があります。治療効果には個人差があり、あくまでご参考とお考え下さい。 |
上下顎同時後方移動
(非抜歯治療の可能性の拡大)
今まで奥歯を後ろに動かす場合、先ずは上顎の奥歯を動かし、次に下顎の奥歯を動かしたり、ヘッドギアやリップバンパなどの付加的装置を多様したり、上下顎の奥歯を同時に動かすことはかなり難しい処置でした。
ところが歯科矯正用アンカースクリューを用いた矯正(歯科)治療を行うことで、上下顎それぞれに固定源を持つことができ、上下顎奥歯を同時に後ろに動かすとが可能となりました。結果、非抜歯矯正治療の可能性が広がりました。
- AからDの順に経過を示します。水色丸:歯科矯正用アンカースクリュー(デュアル・トップオートスクリュー)上顎と下顎では同じ種類の歯科矯正用アンカースクリューを使用していますが、目的あるいは治療効果により埋入部位を変えていきます(写真C、Dの上顎では治療の進行により内側に歯科矯正用アンカースクリューを入れ替えました)。
上顎
下顎前歯は移動させずに、奥歯の後方移動と歯列弓の側方拡大にてデコボコを改善する。 赤 矯正治療前 青 治療目標
(矯正治療後)赤 矯正治療前 青 治療目標(矯正治療後) 歯科矯正用アンカースクリューにて治療目標を達成することができた。矯正治療後(緑)上顎奥歯の圧下(上に潜らせる)により下顎が反時計回りの回転をしたことで開校が改善された。(下顎の赤線と緑線のズレ)
主訴 | 前歯の歯並びを治したい |
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診断名 | 開咬 |
初診時年齢 | 13歳8ヶ月 |
症状 | 前歯部噛み合わない状態 |
主な矯正装置 | マルチブラケット矯正装置、歯科矯正用アンカースクリュー |
抜歯 | 非抜歯 |
治療期間 | 1年10ヶ月(初診検査から矯正治療終了時検査までの期間) |
費用 | 96万円(税抜) |
治療上のリスク | カリエス、歯肉退縮、顎関節症、歯根吸収、失活歯、クラック、歯根の露出、歯周病治療があります。治療効果には個人差があり、あくまでご参考とお考え下さい。 |
大臼歯の圧下
一般的に前歯部開咬といって前歯が噛まずに奥歯しか噛んでいない患者さんでは、前歯に小さなゴムを使用して上下前歯を引っ張りだし、前歯が噛めるように治療してきました。そのような治療は歯と顔貌の調和を悪化させる可能性が考えられます。前歯部開咬症や一部の上顎前突症では、上顎奥歯が伸び上がり高く(挺出)なっていることが多いです。
矯正治療では、上下顎奥歯をもぐらせ低くする(圧下)ことは非常に難しい処置で、ほとんど不可能と考えられています。ですが歯科矯正用アンカースクリューを使用することで奥歯を効果的に圧下して前歯を噛ますことが可能となりました。そのような治療により顔貌との調和を悪化させることなく機能的、審美的に改善が可能となりました。
- AからDの順に治療の経過を示します。
水色丸:組織外プレート
※完成物薬機法対象外の矯正歯科装置であり、医薬品副作用被害救済制度の対象外となる場合があります。
歯科矯正用アンカースクリュー(デュアル・トップオートスクリュー) 上顎と下顎では違う種類のインプラントを使用しています。
上顎
下顎前歯は移動させずに、奥歯の後方移動にてデコボコを改善する。 赤 矯正治療前 青 治療目標
(矯正治療後)赤 矯正治療前 青 治療目標(矯正治療後) 歯科矯正用アンカースクリューにて治療目標を達成することができた。上下顎の奥歯の後方移動によりガタガタが改善された。
主訴 | 前歯の歯並びを治したい |
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診断名 | 前歯部叢生 |
初診時年齢 | 20歳2ヶ月 |
症状 | 上下顎左側側切歯の舌側転位 |
主な矯正装置 | マルチブラケット矯正装置、歯科矯正用アンカースクリュー、アンカープレート |
抜歯 | 非抜歯 |
治療期間 | 2年6ヶ月(初診検査から矯正治療終了時検査までの期間) |
費用 | 96万円(税抜) |
治療上のリスク | カリエス、歯肉退縮、顎関節症、歯根吸収、失活歯、クラック、歯根の露出、歯周病治療があります。治療効果には個人差があり、あくまでご参考とお考え下さい。 |
インプラントのタイプ TYPE OF IMPLANT
歯科矯正用
アンカースクリュー
スクリュー埋入部位に麻酔を行い歯肉を切開することなく、歯科矯正用アンカースクリューを1本埋入するのに5分程で完了します。埋入後、確認のレントゲン撮影をし、抗生剤、鎮痛剤を飲んでいただきます。麻酔の効果が切れても著しい痛みや腫れを伴うことはありません。
この歯科矯正用アンカースクリューの埋入部位は、下顎の舌側以外ほぼ全ての箇所に埋入可能ですが、歯科矯正用アンカースクリューを利用した場合、僅か3mm程の歯根間に埋入するため、歯を動かせる量は3mm以内に制限されます。
- 上下顎ガタガタの成人女性です。
AからDへと治療の経過を示します。
歯科矯正用アンカースクリュー(デュアル・トップオートスクリュー)を利用して上顎前歯の後方移動と下顎奥歯の前方移動をして噛み合わせを改善しました。
主訴 | 前歯の歯並びを治したい |
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診断名 | 前歯部叢生を伴う上顎前突 |
初診時年齢 | 12歳8ヶ月 |
症状 | 上顎犬歯の唇側転位 |
主な矯正装置 | マルチブラケット矯正装置、 歯科矯正用アンカースクリュー |
抜歯 | 上顎両側第一小臼歯、下顎両側第二小臼歯 |
治療期間 | 2年6ヶ月(初診検査から矯正治療終了時検査までの期間) |
費用 | 96万円(税抜) |
治療上のリスク | カリエス、歯肉退縮、顎関節症、歯根吸収、失活歯、クラック、歯根の露出、歯周病治療があります。治療効果には個人差があり、あくまでご参考とお考え下さい。 |
組織外プレートタイプ
素材は純チタンからできており、顎顔面骨折の治療の際、ギブスの代わりとして骨折部の接合をする為に使用しているプレートを、矯正治療に応用しています。プレート埋入部位に麻酔を行い歯肉を切開することなく、プレートを1枚挿入するのに15分程で完了します。埋入後、確認のレントゲン撮影をし、抗生剤、鎮痛剤を飲んでいただきます。麻酔の効果が切れても著しい痛みや腫れを伴うことはありません。
主に挿入する部位は、上顎の裏側前方部です。歯を動かせる量は、歯根による制限を受けないため3mm以上でも全く問題なく移動可能ですが、歯を動かしたい方向に沢山の骨量(後方容量)がなければなりません。
※完成物薬機法対象外の矯正歯科装置であり、医薬品副作用被害救済制度の対象外となる場合があります。
- 上下顎ガタガタの成人女性です。
AからDへと治療の経過を示します。
上顎インプラントプレートと下顎歯科矯正用アンカースクリュー(デュアル・トップオートスクリュー)を利用して上下顎の奥歯を後方移動して噛み合わせを改善しました。
主訴 | 前歯の歯並びを治したい |
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診断名 | 前歯部叢生 |
初診時年齢 | 47歳1ヶ月 |
症状 | 上顎左側犬歯の唇側転位と下顎前歯叢生 |
主な矯正装置 | マルチブラケット矯正装置、歯科矯正用アンカースクリュー、アンカープレート |
抜歯 | 上顎両側第一小臼歯、下顎両側第二小臼歯 |
治療期間 | 3年3ヶ月(初診検査から矯正治療終了時検査までの期間) |
費用 | 96万円(税抜) |
治療上のリスク | カリエス、歯肉退縮、顎関節症、歯根吸収、失活歯、クラック、歯根の露出、歯周病治療があります。治療効果には個人差があり、あくまでご参考とお考え下さい。 |
埋入型プレートタイプ
素材は純チタンからできており、顎顔面骨折の治療の際、ギブスの代わりとして骨折部の接合をする為に使用しているプレートを、矯正治療に応用しています。プレート埋入部位に麻酔を行い歯肉を切開して、プレートを1枚挿入するのに20分程で完了します。埋入後、歯肉の縫合、確認のレントゲン撮影をし、抗生剤、鎮痛剤を飲んでいただきます。
麻酔の効果が切れた後、徐々に痛み、腫れを伴いますが1週間程で治まります。主に挿入する部位は、下顎の頬側後方部です。歯を動かせる量は、歯根による制限を受けないため3mm以上でも全く問題なく移動可能ですが、歯を動かしたい方向に沢山の骨量(後方容量)がなければなりません。
※完成物薬機法対象外の矯正歯科装置であり、医薬品副作用被害救済制度の対象外となる場合があります。
- 前歯部反対咬合の成人女性です。
AからDへと治療の経過を示します。
プレートを利用して下顎の奥歯を後方移動して噛み合わせを改善しました。
主訴 | 前歯の反対咬合を治したい |
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診断名 | 骨格性反対咬合 |
初診時年齢 | 40歳10ヶ月 |
症状 | 上顎右側犬歯の唇側転位と下顎前歯唇側傾斜 |
主な矯正装置 | マルチブラケット矯正装置、アンカープレート |
抜歯 | 非抜歯 |
治療期間 | 4年4ヶ月(初診検査から矯正治療終了時検査までの期間) |
費用 | 96万円(税抜) |
治療上のリスク | カリエス、歯肉退縮、顎関節症、歯根吸収、失活歯、クラック、歯根の露出、歯周病治療があります。治療効果には個人差があり、あくまでご参考とお考え下さい。 |
EFFICIENCY 矯正治療の効率化
矯正治療が長期化すると、患者様のモチベーションの低下につながり、虫歯の発生や歯周組織への悪影響が問題になることも考えられます。そのため、治療期間の短縮は、患者様と矯正医の双方にとって大きなメリットとなることは間違いありません。治療期間を効率化するのに必要な要件は、下記の通りです。
患者様に起因する要件
- ご年齢
- 骨格形態
- 不正咬合の種類
- 歯並びの乱れの程度
- 歯牙の移動量(前歯、臼歯)
治療に起因する要件
- 治療のメカニクス
- ワイヤーシーケンス
- 来院間隔
- 治療時間
- 患者様のご協力
ワイヤーのメカニックについて
犬歯の遠心移動
治療の初期段階から、すべての歯を同時に目的の方向に移動させることが重要です。治療が遅れてしまう主な原因は、前歯部のバイトコントロールを失い、前歯部の被蓋が深くなることです。これは犬歯の後方移動に伴う歯冠の遠心傾斜のBowing Effectが影響していると考えられます。
前歯の被蓋が深くなると、前歯を後方に移動させることが難しくなります。前歯のリトラクト(水平方向の移動)は、垂直方向の変化に影響を受けます。そのため、前歯を後方に移動させる前に十分な前歯の圧下移動が必要です。
左右非対称に対する移動
左右の歯の近遠心的位置に違いがある場合、片側の遠心移動は意外と難しいことがあります。使用するメカニックや遠心移動のタイミングと関係します。
歯牙の同時移動
犬歯のDHookとユーティリティーアーチを同時に使用します。噛み合わせが深くならないようにするためには、UArchを早期に装着することが大切です。メインワイヤーが細い場合でも、EXSLのpcを使って歯を移動させます。ワイヤーがある程度太くなった段階で、DHookを装着して犬歯の遠心移動を行います。
UAを使って前歯を圧下しながら、リトラクトを少しずつ進めます。下顎で16×22/YE/FA/SRSのワイヤーを使用し、前歯トルク抜きで3-6PCと同時に前歯のリトラクトを行います。臼歯のコントロールが難しくなるため(臼歯トルクやアーチフォームの尖形など)、RSはなるべく使用しません。
抜歯症例に対する移動
抜歯の症例では、犬歯の歯体移動と上下前歯の圧下が重要です。そのため、犬歯にはDHook、上顎前歯にはUAを使用します。下顎前歯は口腔前庭が狭いため、リバースカーブと前歯トルク抜きを組み合わせるのが効果的ですが、臼歯にはCrLiTqを付与します。上下顎ともにリバースカーブワイヤーを使用すると、静的反作用が前歯のCrBuTqに影響を与えます。そのため、下顎前歯ではトルク抜きが重要となり、上顎前歯についてはコントロールティップでリトラクトを行います。
具体的には、0.022スロットに対して0.017×0.025インチのループメカニックを使用しています。これらの対策は、上下前歯の歯根が歯槽突起から後方に逸脱しないようにするためのものです。臼歯は近遠心方向に移動し、前歯は唇舌方向に移動します。
犬歯は両方の方向に移動します。コンティニュアンスアーチワイヤーで治療する場合、すべての歯に同じトルクがかかりますが、移動方向が問題点として上がります。前歯の前後移動には歯槽骨の限界があるため、前歯が歯槽骨から逸脱しないように注意します。特に下顎前歯では、歯根が歯槽突起の舌側から逸脱する恐れがあります。この問題は上顎でも発生する可能性があります。
当院では、前歯部の歯根逸脱を防ぐために、0.022スロットに対して上顎には0.017×0.025インチ、下顎には0.016×0.022インチのループメカニクスを使用し、コントロールティッピングで前歯のリトラクトすることを心掛けています。
インシグニアの使用
インシグニアを使用する主な理由は、歯根を確認できるためです。Osteoid社の技術により、歯冠のSTLデータと歯根のDicomデータを統合し、歯冠と歯根の可視化ができるようになりました。
当院では、インシグニアを用いて治療目標となるセットアップを作成し、インダイレクトボンディングのコアを作成します。治療終了後には、Osteoidの歯冠と歯根のフュージョンモデルを治療前後で重ね合わせ、歯根の移動を確認しています。
FLOW 顎変形症の治療(外科矯正)
下顎が内側、上顎が外側に出ているのが正常な噛み合わせであるのに対し、顎の骨が異常な形状になっているのが、顎変形症です。顎変形症には、下記のようなケースがあります。
- 下顎の骨自体が大きく下に突き出ている受け口(下顎前突)
- 下顎の骨が非常に小さく相対的に出っ歯(上顎前突)
- 正面から見たときに顔が横に曲がっている(下顎側方偏位)
上記の治療を成長発育が終了した成人が行う場合、著しい骨格の不調和によって噛み合わせのずれが大きく、歯を動かすだけでは治療ができないケースがあります。その際に適応されるのが、顎変形症手術です。
顎変形症手術自体は、全身麻酔下で2時間~3時間で終了するものです。手術後には1週間~2週間入院をして、腫れや痛み、食事の管理を行います。
なお、当院は顎変形症に対する施設基準を満たしているため、顎変形症手術を行う場合には矯正治療、手術、入院の全てに健康保険が適用可能です。 顎変形症手術の治療の流れは、以下の通りです。
検査
まずは矯正単独治療と同様の検査を行い、それにプラスして顔面の筋活動を調べます。
手術のカウンセリング
当院長と顎変形症手術を執刀する口腔外科医とで、手術に対するカウンセリングを行います。
CT撮影と術前矯正
(1年半~2年)骨格改善を重要視した治療目標を設定するためCTによる撮影を行い、ManMoS(複合現実感シミュレーションシステム)を用いて、歯を動かす前の状態でシミュレーションをします。
このシミュレーションにより、手術前矯正を行う上でどのように歯を動かしていくのかを決定します。手術前矯正にはブラケットとワイヤーを使用し、期間は1年~1年半程です。顎変形症手術
(2週間の入院)外科手術をする1週間~2週間前に、自己血の採血と麻酔検査を行います。次に、外科手術直前の状態で2度目のCT撮影を行い、再びManMoSを用いて、最終的な骨格改善のシミュレーションをします。
そして、シミュレーションの結果を基に外科手術法を決定。その通りの下顎骨の位置関係を再現するための、顎間固定用スプリントを作製し、手術時には顎間固定用スプリントを基に、口腔外科医が骨格の位置関係を改善します。
手術は矯正装置を装着した状態で行います。手術の種類は上顎あるいは下顎だけの1Jaw surgeryと、上顎と下顎の両方とも行う2Jaw surgeryの2種類です。入院期間は同じですが、手術時間には2Jaw surgeryの方が長くかかります。骨固定具の撤去
(4日~7日間の入院)手術の際には骨を固定するために、ボーンスクリューやボーンプレートを用います。手術後6ヶ月~10ヶ月の間で、固定具の撤去を全身麻酔下で行います。
術後矯正(1年~2年)
退院後も、引き続き歯並びの調整を行います。術前の上下骨格の不調和が著しいほど、術後矯正治療の期間は長くなります。顎変形症治療は非常に複雑で、骨格の不調和によって、歯は前後、左右、上下と三次元に乱れています。その複雑な歯のズレを正確に把握して、上下それぞれの顎の中で正しいと思われる位置に歯を動かし戻す技量が求められます。
そのための工夫として、私たちは歯科矯正用アンカースクリューを採用いたしました。患者さんそれぞれの症例に対応するために、矯正治療は当院長自身が責任をもって担当し、顎変形症手術は大学病院で行っております。
院長の顎変形症に対する治療の考えは、「あまり複雑な手術をしない」ということが第一です。手術を単純化することで術前矯正は複雑になり、術前矯正の治療期間が長くなります。
一方で、手術を複雑にして骨の離断箇所を増やすと、骨の治癒の予後が良くなかったり、あるいは綺麗なお顔つきに戻らなかったりする可能性があるのです。
術前矯正で移動すべき歯のズレを把握して移動することで、手術自体を単純化するために術前矯正期間の延長があることをご理解ください。
歯周病で失う歯を減らす、
歯周矯正治療
歯周病は、歯周病菌により炎症で歯を支えている骨が痩せてきた結果、歯がグラグラしていずれ抜けてしまう病気です。歯周病菌の感染、その後免疫低下などによる原因で発症します。
その時に、噛み合わせがずれていて歯にかかる力のコントロールができていないと、炎症の悪化によって歯周病が進行するケースがよく見られます。そういった理由をもとに、歯周病治療にも力のコントロールのための矯正治療が適用されるケースが、近年では多くなってきました。
なお、歯周病の症状が進んでいると、歯がグラグラと揺れた状態にあります。矯正治療では力をかけて歯を動かすため、治療途中に歯の揺れが著しくなり、結果的に治療中に歯を失う可能性も捨てきれません。しかし、矯正治療中に噛み合わせの調整をして、力のかけ方を調節しながら歯を並べていくことができれば、歯周病で歯を失わずに済むだけでなく、矯正治療後には歯が磨きやすくなり、将来の歯周病菌を増やさないことに役立ちます。
歯周病の状態でガタガタの歯並びを放置すると、清掃性や噛み合わせの力のコントロールができず、歯周病が悪化するリスクが高まります。その結果、多くの方が年を取ってから歯を失うことになるのです。
中年期以降、「今更、審美治療のようにブラケットやワイヤーを付けたくない」と言わず、病的なものに対する治療の一環として、ぜひとも歯周矯正治療を考えていただきたいというのが、当院の思いです。
まだ健康な歯を活用する
“歯の移植”
矯正治療では、必要に迫られて歯を抜く“便宜抜歯”をして治療をすることがありますが、その抜いた歯を欠損している場所に移植する形で活用する、歯の移植治療という方法もあります。
移植をすることで歯の欠損を補うことができ、同時に矯正治療においても歯並びを作るのに非常に有利となります。
なお、移植をした歯は神経を取らなくてはいけないケースが多いものです。神経を取っても歯の根周りを覆う歯根膜という組織によって歯は機能しますが、神経を取った歯は免疫力が著しく弱ってしまうことから、一生使い続けられる保証はありません。
移植後の歯は、かなり高い確率で機能しますが、長く神経のない歯を使っていると割れてしまって、抜歯に至ることもあります。そのような場合には、残念ながらせっかく移植した歯でも抜歯をして、その後インプラント等に置き換える必要があります。
それでも、インプラントという人工物をすぐに入れるのではなく、移植により自分の生まれ持った歯を少しでも長く使い続けられるのは非常に良いことです。
また、歯の根の周りを覆っている歯根膜が噛む力のセンサーとなっています。その点からも、歯根膜が残っている歯をなるべく多く残すことが重要だと考え、移植という治療法を選択肢にしています。
※親知らずを移植する時には保険適用になる場合がありますが、矯正治療では小臼歯を移植するケースが多く、その場合は保険適用にはなりません。